先日は、リップシンク (口パク) の簡単な定義と、なぜ韓ドルたちがリップシンク (口パク) を使うのかという話をさせていただきました。
その内容に関してはたくさんのブロガーさんたちが書かれていることと「たいして変わらないじゃん!(怒)」と思った方も多いはず。
まあ、そのとおりなんですけどね。
前回のあの序章があってこそのこの記事なので。
前回は彼らがリップシンクを利用する理由として、
・激しいダンスから生じる息切れ
・歌手側の歌唱力
・韓ドルの体調
と、韓ドル目線から見た理由を載せました。
なので今回は第②弾として他者が望む韓ドルたちのリップシンク について書こうと思います。
ちょっとした業界の裏側編です。
さて、実は本人たち以外のところでも彼ら韓ドルたちのリップシンクに頼らざるを得ない理由が山ほどある韓国の音楽業界。
音楽番組の生放送や音楽イベントにおいて多人数が出演するがゆえに発生する放送事故や音響トラブルなど、日本以上にさまざまな問題が発生しているのはあなたもご存知かと思います。
そういえば韓ドルのリップシンクについて「あれって、マイクが足りないんでしょ?」と最近知り合いに聞かれた私。
??と、質問自体にびっくりして思わず聞き返したんですが今はそう出回っているんですかね?
マイクというより音響 (PA) 側の問題で….というなら理解できますが….
(マイク足りない韓ドルみたことないけど、本当なんですか!?← 2回目)
というわけで今回のリップシンクについては、この音響 (PA) システムのお話と深く絡みますので良く聞いてくださいね。
今はどこの世界でも歌手が歌を唄う時には必要不可欠なマイク。
このマイクというもの、種類はたくさんあれど全てミキサーと呼ばれる『音』をコントロールする機械に繋がっているのはあなたもご存知かと思います。
一般的にミキサーと呼ばれるこの機械ですが、これはマイクを持つ歌手ひとりひとりに専用回線を 1チャンネルずつ与え、声量 (声の音量や響き) の調節やエフェクト加工など様々なことをやりこなす非常に便利な機材となっています。
※上の写真の黒いスライドボタンひとつが 1チャンネルでモニター画面を含む縦一例がそのチャンネルのコントロール部分となります
ちなみにミキサーにはステージ内の音とステージ外の音など、音楽に関わるもの全てにチャンネルを与え細かくコントロールできるようになっています。(総合してPA音響と呼ぶ)
この機械は音楽番組やコンサート会場には無くてはならない本当に万能なやつなんですが、唯一の欠点がひとつだけあります。
それは「チャンネル数には限りがある」ということ。
このチャンネル数が増えれば増えるほど高価になっていく悩ましい音響機材のひとつミキサーが、なぜリップシンクに関係あるのかというと…
とりあえず今年の私のイチオシ、SEVENTEENの力を借りて説明します。
まず最初に、SEVENTEENというグループにはメンバーが13人います。
もちろん全員にボーカルパートがあるので必要マイクは13個。(※ 2個持ち除く)
これは上記で説明したミキサーのチャンネルを13個使うということになります。
そして各メンバーの耳にハマっているイヤーモニター用のチャンネルも個人回線のため13個使用。
ここですでに合計26チャンネル使っていますよね。
そして音楽番組や合同音楽祭などのイベント会場では出演するグループとは別に、必ず使わなければならないチャンネルというものがあります。
それは客席向けのスピーカー用 (会場の規模によるので最低 2個から無限大) と、
ステージ内 (歌手側) だけで使用するモニタースピーカー用 (これもステージの広さによって数が変わる)。
当然ミキサー側では個人回線と固定回線の両方をコントロールしていくためSEVENTEENだけでも最低30~40、もしくはそれ以上のチャンネルを使用するはめになります。
特に音楽番組や合同音楽祭等では出演するのはSEVENTEENだけではないですよね。
当然チャンネルの同時使用数には限界があるので、客席向けのスピーカーとステージ内のモニタースピーカーの固定チャンネル以外の部分、
つまり歌手側のマイクとイヤーモニターのチャンネルを他のグループ用にも使い回すということになります。
一応マイク用のチャンネルはそのまま次のグループに合わせて切り替えが出来ますが、生のイベントや音楽番組の場合、韓国ではグループ自体の切り替えも早いため全てを一気に変えるには音響さんの手が足りません。
※基本デジタル制御ですが、何年か前に切り替えに失敗して別グループの会話音声を流したMAMAの放送事故は有名。
そんな時、そう、まさにこんな時、ガイドボーカル入りの『MR』音源を使ってリップシンクをしていただくんです。
この『MR』音源が登場すればグループ切り替え時の問題 (マイクの微調整やセッティング時間など) が解決され、音響さんにはほんの少しの余裕が生まれます。(ARはさらに楽)
今やほとんどのグループが使うこの『MR』音源、音楽番組の動画などで歌い出し部分をよく聴いてみるとガイドボーカルが必ず入っているのが分かると思います。
この歌い出しのガイドボーカルは、もともと歌手の音程調整として使われる面が大きかったのですが、今現在は音響さんの微調整のためにも使われる便利なものとなっています。
リハーサルの段階でどんなに細かく調整しても会場にお客さんが入った時点で音自体が変わってしまいますので。
この微調整に失敗すると、歌手もお客さんも音響さんも全員が嫌な気分になるという魔の会場に早変わりしてしまうため、音響さんは歌手以上に神経をすり減らしながら常に音を微調整をしていくんです。
もし仮に私が音響の仕事をしていたら….
「とりあえずマイク音量絞っておくから初声はリップシンクしといてよ。微調整するから」
と、リアルに言うかもしれない。← プロ失格タイプ
ついでに音楽番組の事前収録は時間に余裕があるため、音響さんにとっては涙が出るほどの超楽ちん作業となります。
そして個人パート部分が完全リップシンクだったり『AR (ALLリップシンク)』音源のみのグループの場合は…..
「ただでさえ数が少ないんだからさ、君らに与えるチャンネルなんかないよ。ダミーのマイクは貸すけどね」の世界。
※これは歌にパンチがない人や新人グループに多い パターンです
まあ、これはあくまでも例えなので「そんなこともあるんだ~」程度に聞いておいて頂ければ。
それと、もうひとつ。
韓ドルは非常に歌が上手い人が多いですが、どんなに歌がうまくても声量 (声の大きさ+響き) が足りない人がいます。
ソロではあまり問題視されませんが、グループの場合、声量大の人と声量少の人の差が開きすぎると万能ミキサーでもカバーしきれない部分が必ず出てきます。
これは下手に調整した場合ハウリングという耳が裂けるほどのノイズが発生することもあるため、調整したくても出来ない非常にもどかしい部分。
日本では経験値の高い音響さんはハウリングが発生した瞬間にノイズをカットする技術を持っているのでほぼ発生しませんけどね。
さすがに本国では技術不足の方が多いため、こういった時にもお助けアイテムであるガイドボーカル入りの『MR』音源 (声量少のボーカルをカバーするため) を活躍させたりします。
韓ドルたちの名誉のために『稀』だと一応フォローしておきます
以上、今回は韓国音楽業界の裏側編ということでスタッフ (音響さん) の目線で見た韓ドルたちのリップシンクをお送りしました。
なるべく分かりやすく書こうと試行錯誤したつもりですが、文才がないうえに小難しい話が続いてしまってホント申し訳ないです。
それと、これはあくまでもお隣の国での話なので『日本でもそうだろう』などと決して思わないようにお願いしますね。
前回の記事でも書きましたが、私自身は韓ドルたちのリップシンクについて内外の事情がある程度分かるため何とも思わない派です。
が、明らかに「こいつだけリップシンクがバレバレじゃん」というのが見えた時には他の皆さんと同様にため息がもれる派でもあります。